《MUMEI》

◆◇◆

「奏美‥」

 彩貴がその名を呼ぶと、調べが止まった。

 そこにいたのは、あの琵琶弾きの娘。

「すみませんこんな刻に‥。あんまり楽しそうだったもので」

「お前も来るか、奏美」

「宜しいのですか‥?」

 彩貴が答えるより先に、後ろを歩いていた大鬼が奏美を抱き上げ、肩に座らせた。

 奏美が驚いていると、夜桜が声をかける。

「大丈夫だ。怖がる必要は無い」

 奏美は安堵し、再び琵琶を奏で始めた。

「───────」

 本当に祭のようだ、と夜桜は思う。

 妖達は雪洞をゆらし、思い思いに平安京を漫ろ歩いていた。

◆◇◆

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