《MUMEI》

◆◇◆

 寅の刻が近付き、行列は鬼門へと戻り始めていた。

 夜桜の周りでは、小さな妖達が群がるようにしながら歩いている。

 後ろからは、相変わらず賑やかに、楽しげな声や音が犇き合っていた。

 ひゅるり、と長い紙のような妖が頭上を飛び交い、舞うように翻る。

 しゃん。

 しゃらん。

 ゆらめく妖、異形。

 狭間へ来ると、皆が立ち止まり口々に夜桜達に礼を言った。

 ちょろり、と鼠のような妖が夜桜の足元に進み出、きぃきぃ声で言う。

「また来てもいいか?」

「ああ。いつでも歓迎だ」

 妖達は深々と頭を垂れ、鬼門へと向き直った。

 ゆっくりと、戻って行く。

 己の、在るべき場所へと。

◆◇◆

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