《MUMEI》
二度揚げフライ(1回完結)
なんだ?
このオヤジ。

ろくに仕事も教えてくれずに。

昨日の揚げ物を出すのか?
ちょっと待ってくれ…
ひどくないか?
昨日のあまりものを。
命令だから手を染める。もう一度油であげて飯に盛りつける。

犯罪者の仲間入りした気分だね。

最後にオヤジが犯罪フライの上にルーを盛りつける。

いっちょ上がり!!

うまそうにそれを食べる客を見る。
あぁ…、だまされて。

いい加減な店だ。
やめてしまおうか?

いや、金が必要だからそれもできねえ。

いや?ネタばらしたら謝礼金もらえんのかね?

オヤジはいまだに独身。
僕らに本音はオドオドしてる。

やめられてもチクられても生きていけねえからな。

あんな大人にはなりたくない。

オヤジのいい加減にムカムカしてきた。
オヤジが頭をポリポリかいた。
その手でサラダを盛り付けやがった。

えい!!!

次の瞬間、オヤジがすっ飛んだ。

鍋が落ちてオヤジは床にうずくまり鼻血をたれていた。

胸ポケットからカードが飛び出た。某有名サラ金会社のカード。

拾ってやり、手渡してやった。

急にオヤジがあわれに見えてきた。

僕は今だにクビにならず、今日もフライを揚げている。

早くやめてやる。
次のバイトをみつけて早くやめてやる。
犯罪のアリジゴクに染まらぬうちに。

しかし、このキノコ頭ではなかなかムズイ。

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