《MUMEI》

「……貴方は愚かだ。」



目覚め頭に誉に降って来た言葉は此れだった。

林太郎はずっと誉の横で看ていた。


「君が看てくれたのか。」

嬉々として笑みを零す誉を見ることさえ飽きる程、林太郎は近くに置かれていた。

「だから忠告したじゃないですか。」

林太郎の予言は当たってしまった。

「君から手紙を貰ったつもりだったんだ。」

犯人は林太郎の振りをして誉を温室まで呼び付けた。

「……字を見せた事は有りましたっけ。」

林太郎は冷ややかに寝具の中の誉を見据えた。
そこまで親交を深めた記憶は互いに無い。

「参ったなあ、君には。」

誉は諦めたように笑う。

「安静にしていた方が貴方の為ですよ。」

誉の包帯を替えてやる。
腹部に生々しい痂と縫い目が見えた。

「……君に頼み事が有るのだけれど」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫