《MUMEI》

(同点…)


追い付かれた赤高。


(時間は?)


残り時間を確認するクロ。


(もうあと20分もないのか…)


クロが席を立つ。


「タイムアウトお願いします。」


「ピー!!」


時計が止まる。


「すいません…」


「謝んなくていいよ。


マネージャー、ドリンクあげて。」


「はい。」


急いで全員に飲み物を渡すマネージャー。


「飲みながらでいいから聞いて。


今うちにはロングしかない。


残り時間はガンガンロングを打ってきて。」


「…通用しますかね?」


「じゃなきゃ負けるんだよ。


かと言って投げやりに打って決められる相手でもない。


だから、ユキヒロと峰田のロングを打ちやすいようにする。」


「…?」


「まず日高。」


「はい。」


「ボールもらったらサイド上がり。


そのままポストに入って。」


「わかりました。」


「んで椎名はロングを打てる環境が整ったところで指示を。」


「はい。」


「日高がポストにいる分、戻りが遅れるけど、そこは関谷がカバー。


もう速攻は捨てていいから、戻ることに全てをかけて。


負担がかかると思うけど、両サイドを見てくれ。」


「オッケーす!!」


「と言っても、2人見るのには限界がある。


村木はロングパスが来たらカット狙ってもいい。」


「…はい。」


「沖は日高とは逆側について。」


「はい。」


「最後に、ユキヒロと峰田。」


「はい。」


「今からお前たちのロングシュートの力を2倍にあげる。」


「…は?」


クロが大会前から考えていた、


『秘密兵器』


それはユキヒロと峰田にかけた魔法を解くことだった。

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