《MUMEI》 早朝の訪問客「おはよう、田中君」 「…お前、今何時だと思ってるんだ」 「もしかして、寝てた?」 (もしかしても何も…) 夏休み初日の午前六時に、起きている方が珍しいと思った。 「今日は朗読ボランティアだよ!」 「現地集合・十時だけどな…」 爽やかな笑顔の高山に、俺はうんざりしながら言った。 「…柊?」 俺と同じように、眠そうな顔の屋代さんが隣から顔を出した。 「あ、おはようございます、祐希さん! 今日はよろしくお願いします!」 「お前…も?」 「すみません、何か、行きたいって言い出して」 俺の説明に、屋代さんは複雑な表情で笑った。 高山が希先輩に会う為に行きたいと言っているのが、屋代さんにもわかっているのだろう。 「少し早くなるけど、一緒に行くかい?」 「えっ!?」 俺は遠慮したかったが 「はい、是非お願いします!」 高山は即答して、俺に早く準備をするように促した。 「…つーか、着替は自分でするから!」 「だって早く行かないと祐希さん出発しちゃうよ」 「しないよ!」 俺は屋代さんの出勤時間を把握していたから、普通に身支度を整えて、部屋を出た 前へ |次へ |
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