《MUMEI》
結果
「谷口、さっきの時間どこ行ってたの?」

「……ん?ちょっとね。………あ」

永井さんがくすっと小さく笑みをこぼした。

「また“ちょっと”?いつから秘密主義になったの」

「休みが多いから校長先生に呼び出しを食らってたんだよ」

仕方なく適当に嘘をついた。

「やっと呼び出し食らったのね。全然注意されないからおかしいなって思ってた」

「顔がいいからって?これでひいきじゃないってわかったね」

「だ…っ誰もそんなこと言ってないでしょ!」

「冗談だよ。永井さんっておもしろいね」

永井さんは怒ったようにさらに言い返してくる。

「あのふたりって仲良いよねー」

「付き合ったりしてないのかな」

「……あれ、伊久子フラれたって言ってたよ?なんか谷口くんには恋人がいるって笑ってたけど、すごく見てて痛々しかったな」

「でも今笑えてるから伊久子は幸せだよね」

「うん」


***


「谷口、校長先生がお呼びだよ。次の授業は大丈夫だから行っといで」

「ハイ」

――あれから一週間、多分決定が出たんだろう。

どんな決定を下したんだろうか。

どちらかを辞めないといけないのかな。そしたらオレはどうしたらいいんだ?


――コンコン

「失礼します」

「谷口くん、そこに座りなさい。わかってると思うが、アレの結果だ」

黒塗りの革のソファに腰かける。

緊張が身体を震えさせた。

「おめでとう」

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