《MUMEI》
朗読ボランティア
「じゃあ、皆に紹介するから、付いてきて」


「はい」


俺と高山と希先輩・それに、福祉の仕事に関心のある図書委員の女子三名を入れた六人は、屋代さんに続いた。


班長の希先輩が、屋代さんの一番近くにいて、高山はさりげなく希先輩の近くにいた。


三人の女子は、仲がいいらしく、固まっていて、俺だけが浮いている感じだった。


先程通った食堂の中に入る。


先程と違い、車椅子や椅子に座ったたくさんの老人達がきちんと整列していた。

老人ホームの入居者は、圧倒的に女性が多いらしく、皆高山に釘付けだった。


(この後、大丈夫かよ)


自己紹介が済んだ俺達は、いくつかのグループに分かれて円を作り、朗読を行う予定になっていた。


「じゃあ、柊と希はフリーで、皆のフォロー頼むな」

不安気な希先輩をフォローしたのは屋代さんだった。

(うまいな)


高山は、屋代さんからアドバイスをもらった希先輩が言う通り、まんべんなく各グループに顔を出していた。


「あんた、顔はいまいちだけど、いい声してるね〜」

「…どうも、ありがとうございます」


無事に朗読を終えた俺は、これで普通に帰れると思った。

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