《MUMEI》 同じ孤独帰ろうとした俺達は、昼食の食事介助も頼まれた。 (…俺達っていうより高山だろうな) 高山は、施設で一番わがままだという婆さんに捕まっていた。 「柊、大丈夫?」 「も、もちろん!」 (ご愁傷様) 希先輩に向ける高山の笑顔はひきつっていた。 「田中君はどうする?」 「俺は…」 時間がかかるが徒歩で帰ろうと思った。 「春日(かすが)さん、皆と一緒に食べましょう」 「部屋で、食べるよ」 俺をおかしな子と言った、老婦人… その寂しげな背中を見るまでは。 春日 旦那様と同じ名字というだけで、俺はその背中を追いかけていた。 「…」 四人部屋の窓際のカーテンが閉まっていた。 「春日さん?」 「おかしな子かい?」 春日さんはカーテンを開け、俺に、隣に座るよう促した。 「俺、そんなにおかしい、…ですか?」 「そりゃ、そんなに可愛い顔、隠してりゃ、ね」 車椅子に座る春日さんは俺の顔が見えたようだ。 「若いのに、じいさん亡くして子供もいないあたしにそっくりな顔してるし」 春日さんの孤独は俺の孤独によく似ていた。 「田中君、ここにいたのか」 前へ |次へ |
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