《MUMEI》 希先輩の好きなタイプ「もう、行きな」 「…」 「若いのに、あたしみたいに諦めてんじゃないよ。 ほら!」 春日さんは骨と皮だけの小さな手で俺の背中を押した。 「珍しいね、春日さんがボランティアと親しいなんて」 屋代さんの言葉に春日さんは答えず、ただ窓の外を眺めていた。 廊下で屋代さんに春日さんの事を訊いたが、個人情報は教えられないと言われた。 「すみません」 「いや、…それより、俺も訊きたい事があるんだけど、夜、アパート来てくれる?」 (何だろう?) 疑問に思いながら、俺は頷いた。 食堂では、未だに高山が悪戦苦闘していて、職員と希先輩がフォローしていた。 わがまま婆さんは、男性職員の方がお気に入りらしく、屋代さんの対応で、何とかその場は落ち着いた。 「祐希さんて、凄いね」 「うん…」 そう言って屋代さんを見つめる希先輩は、まだ諦めきれないような顔をしていた。 「ひょっとして、祐希さんみたいな人、…好き?」 (ゲッ!) 鈍感キングの失言に俺は焦ったが、希先輩は、首を横に振った。 「私は、私が私だから好きになってくれる人が好き」 希先輩はきっぱりと言い切った。 前へ |次へ |
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