《MUMEI》
【番外】庭の隅にて
◆◇◆

 ぽてっ。

 ぽてっ。 

 春の庭を、手毬のような形(なり)の黒い妖が跳ね回っている。

 それは叢(くさむら)に入り、更にその奥へと進んで行く。

 ぴたり。

 ふいに、妖は立ち止まった。

 何かの気配がする。

 何だろう。

 妖はそうっと草の間から覗き込んだ。

 そしてそこにいるものを見、ぱちくり、と瞬きをした。

 雛だ。

 巣から落ちたのだろうか。

 ぴぃ、ぴぃ、と甲高い鳴き声を上げ、ぱたぱたと小さな羽を動かしている。

 妖はぽてぽてと近付き、雛の側に寄った。

 雛はそれに気付き、くりくりとした眼を妖に向ける。

 ぴぃ、と一声鳴き、ひょこ、ひょこ、と妖に近付く。

◆◇◆

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