《MUMEI》

観客席に戻る椎名。


もう皆着替えている。


しかし、そこにクロの姿はない。


「あの…、クロさんは?」


「そういや戻って来ね〜な…」


「自分探して来ましょうか?」


「いや、いいからお前は着替えろ。俺が探してくる。」


クロを探しに、


席を立つ翔太。


(どこ行ったんだ…?)





booboo…booboo…


(…ん?クロからだ。)


授業中の恭介の下へメールが届く。


『負けた…


やっぱ海南強いわ。』


(…そっか。


不思議だな…。


自分の後輩たちが勝ったってのに複雑な気分だ…。)





booboo…booboo…


(…クロ?)


同じく授業中のヤマトの下へも同じメールが届いた。


(二回戦敗退…


まぁ…


今のあいつらにしては上出来だな…


クロ…


悔しいだろうな…)





市民体会場。


「クロさん!!どこ行ってたんすか!?」


「あ〜、ちょっと…な。」


「…?


ミーティング始めましょうよ。」


「うん。今行く。」





これは…


始まり。


黒田小太郎19歳。
専門学校2年生。


北村大和19歳。
大学2年生。


古田翔太18歳。
フリーター。


水川恭介19歳。
専門学校2年生。


この時まだ二十歳にも満たない4人の若きハンドボーラー。


そんな彼らの人生のほんの1ページに起こる、


1つの物語。


これは…


始まり。



-クロのコート第一部完-






-クロのコート第二部-


市民体会場。


県営体育館喫煙所。


「…あれ?」


「どうかした?」


「誰かタバコ忘れてってるよ?」


「え?」


「ホラ。まだ中身入ってる。」


「もらっちゃえもらっちゃえ!!」


「え?大丈夫かな?」


「…たぶん大丈夫だと思いますよ?」


「え?」


「そのタバコ、さっき若い男の人がわざと置いてったの見ましたから。」


「…ならもらおうかな。


ラッキー。」

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