《MUMEI》
寝起き
久しぶりに見た仲村さんは、以前より疲れているように見えた。


(きっと、希先輩絡みだよな)


「慎…起きろ」


自覚は無いだろうが、屋代さんはかなり優しい口調で仲村さんに声をかけた。


「ん…? おかえり、祐希」

顔を上げた仲村さんは、そんな屋代さんに微笑み…


当たり前のように、屋代さんに抱きついた。


(俺の存在、わかってないよな)


祐先輩に続き、その父親の仲村さんのラブシーンも目撃してしまった俺は、リアクションに困っていた。


「慎。…すごく、言いづらいんだけど…」


「何?」


屋代さんは、仲村さんから離れ、俺を指差した。


「こんばんは。…すみません」


俺は、カチカチに固まっている仲村さんに、頭を下げた。


「あああああの、こ、これはその、…そう! 志穂と間違えて、ついうっかり!」


(いや、しっかりあなた、屋代さんの名前呼んじゃってましたよ)


俺は心の中でツッコミを入れた。


(まぁ、でも、これが普通だよな)


祐先輩のように開き直ったように落ち着いている方が、普通じゃないのだ。


「そうですか」


あまりにも可哀想になり、俺は仲村さんの言い訳に納得したフリをした

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