《MUMEI》
訊きたい事
「田中君、夕飯は?」


「食べました」


俺は、屋代さんの質問を予想して、ゼリー飲料を飲んできていた。


「俺達、まだなんだ。…いいかな?」


俺が頷くと、屋代さんは台所に向かった。


「あの、さ。今日、希、どうだった?」


「普通でしたよ」


「ごめん。もうちょっと、具体的に…」


仲村さんは俺に頭を下げた。


(あぁ、そうか…)


チラッと見ると、屋代さんが聞耳をたてているのがわかった。


二人は、希先輩の様子を知りたくて、俺を呼び出したのだ。


まだ気まずい状態の祐先輩や、希先輩に想いを寄せる高山には訊けないだろうから。


「俺は委員会の仕事くらいしかわかりませんが、いつもと変わらず、他の人達と一緒に真面目にこなしてましたよ。
司書の相田先生に頼まれて、相田先生が顧問やってる演劇部に協力もしてましたし…」


「「そうか…」」


仲村さんと、屋代さんは安心したようだった。


「少しは食べれるかい?」

屋代さんは気を遣ってか、二人分にしては多めの料理をテーブルにのせていった。


「すみません、お茶だけで…」


(そろそろ帰るかな)


その時、玄関のチャイムが鳴った。

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