《MUMEI》

◆◇◆

 どれ位経ったろう。

 その時妖は既に枝に移ろうとしていた。

 ぽてっ。

 苦難の末、ようやく巣の近くへ辿り着く事が出来た。

 だが問題はここからだ。

 枝の上は思っていた以上に平均が取り辛い。

 落ちないように注意を払いつつ、徐に巣へと近付く。

 ぎしっ‥。

 微かに枝が軋む。 

 それでも妖は立ち止まる事はしなかった。

 もう、引き下がる訳にはいかないのだから。

 びゅうっ。

 疾風が吹いたが、妖はもろともせず進み続ける。

 途中何度か落ちがかった。

 だが妖は竦む事なく、そろり、そろり、と前進する。

◆◇◆

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