《MUMEI》

奴は、かきおえた。

渡すタイミングだけだ。

明日から冬休み。

最後の部活。


夏海に渡した。

手紙。
下駄箱で。

夏海はとびきりの笑顔。

部活とバイトで下駄箱で別れた。

奴は夏海が見えなくなるまでみていた。

笑顔で手を振る夏海。
きびすを返した、夏海。
手紙はカバンの中。

夏海の後ろ姿。

肩が震えていた。
なぜか、震えていた。

奴は、背中の丸くなった、夏海を見送った。

いつもと違う夏海の後ろ姿。


知っていた夏海。
奴がいなくなるのを知ってた。噂なんかすぐ耳に入る。

夏海は、泣いていた。
手紙の内容はみなくても、わかる。
転校の手紙だと・・・

だから、とびっきりの笑顔。
どうして言ってくれなかったの?
どうして?

そう疑問に思うのだが、奴はそういう男だ。

そう自分に言い聞かせて、涙をみせずに、帰宅した。
バイトは休みをとっていたのだ。

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