《MUMEI》
誕生の秘密
その女は、軽自動車に乗ってやってきた。


身なりも、普通か、普通以下だった。


普通のホテルだったら宿泊拒否されていそうな女だった。


しかも、女の腹の膨らみは、臨月が近い事を現していた。


しかし…カメラでチェックしたにも関わらず、女が向かう部屋の電源は落ちなかった。


窓口からは、声もしなければ、手も出て来なかった。

そして、女は…


赤ん坊を生み捨てて、金も支払わず、逃げるようにホテルを出ていった。


その、赤ん坊が





逃げた女が


俺の母親だった。


だから、俺は両親の事を何も知らない。


ホテルの支配人は、母の顔があまりに美しかったので、俺もそうではないかと


人に言えない性癖をもった金持ちに、高く売れるのではないかと考えていた。


予想通りの容姿と、予想外のキズモノな俺は


支配人の想像以上の金額で

旦那様に買われた。


そして、その後。


旦那様に、飼われた。


愛玩動物。


性玩具。


俺が何であったか、質問された場合の答えはこれだった。


しかし、俺と旦那様の間にあったのは、そんな冷たく非人道的な主従関係では無かった。

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