《MUMEI》

 俺は泣き叫びながら崩れる鬼芦を座らせると、戦意を無くして膝を突いている男に怒鳴った。

「これから先、りんに近づけばお前等全員の首をへし折ってやるぞ!サッカー部どころか水泳部と陸上部が相手になると思え!約束すれば今夜のことは黙っててやる」

 俺の悪友の内の二人は、それらの部の『顔』として知られている。勿論、でまかせだったが。

 俺はそいつに後始末を命じると、りんの戒めを解いて身なりを整え、俺の古着のジャンパーコートの上から肩を抱いて部屋を出た。

 そのとき俺はちょっと気が大きくなっていた。思い切ってあいつの頭を撫でた。髪を触りながらあいつに言った。

「りん、茶髪はやめろ。日本男児は黒だ」

 あいつは『りん』という俺の馴れ馴れしい呼び方に戸惑ったのか、よろよろと歩きながら茫然とした顔で俺を見上げた。

第三章 了

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