《MUMEI》
瀬田くん 〈私〉
「みっつっるっ♪」



元気な声と共に、背中に強い衝撃。



「…っ、瀬田くん!?」



驚いて振り返ると、私の背中に飛びついてきた瀬田くんは、怪訝な顔をした。



「…瀬田―…くん???…『くん』ってなんだよ?」



しまった。
椎名くんは、瀬田くんのこと呼び捨てにしてるのに―…



「えっと、それは、その…」



必死で誤魔化そうとしていると、



「…なーんか、変だよな。
―…怪しい」



目を細めた瀬田くんが顔を近づけてきた。



「…なんか―…女々しくなった?ってゆーか…」


「!!?」



やばい!!勘付かれてる!?



…てか、顔近い!!



もうどうしようもなくなって顔を背けると、



「…まあ、」



すっと私から離れて、瀬田くんは呟いた。そして、



「―…まあ、何もないならいんだけどよ。
…お前、昔っから溜め込むとこあっからさ、」



そう言って、照れたように視線を逸らすと、咳払いをした。



…瀬田くん、椎名くんのこと心配してたんだ。



「…ありがと!!」



私が言うと、瀬田くんは驚いたように私を見た。


…あ、言葉遣い…!!


慌てて言い直す。




「…ありがとう、だぜ!」


「……………(瀬田くん)」


「……………??(私)」




しばらくの沈黙のあと、瀬田くんが吹き出した。



「…やっぱお前、ヘン!!」



でも、そう言う瀬田くんは嬉しそうで、こっちまで嬉しくなって、一緒に笑った。

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