《MUMEI》
間違えた
 避難所を出た二人は暗い通路を歩いていく。
来た道を戻れば地上に出るはずだ、と羽田が先頭に立って進むが、いくら歩けど梯子が見えない。

「先生……」

しばらくして凜がポツリと口を開いた。

「なに?」

「さっきの部屋。来た時と逆のドアから出ませんでした?」

「え……?」

羽田は立ち止まって凜を振り返った。
そして記憶を探る。

「そうだっけ……?」

 羽田はレッカが出て行ったドアから出たのだ。
よく思い出してみると、そのドアは自分たちが入ってきたドアの向かい側。

「あ……」

「やっぱり、気付いてなかったんですね」

「分かってたんなら教えてよ」

額に手をあて、羽田は言う。
そんな羽田を凜は冷めた目で見る。

「自信満々で進んでいくから、てっきり知ってて行くのかと」

「そんなわけないでしょう」

 羽田は大きく息を吐くと、進んで来た通路を見つめた。
薄暗い通路は、どこまでも続いているように見える。

「……一度、戻る?」

考えるように言った羽田に、凜は首を振って答えた。

「いえ。行きましょう。いくらなんでも、そろそろ出口があるはずですから」

「そうね……」

羽田も頷き、二人は再び歩き出した。

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