《MUMEI》
忍の秘密
忍は今は大柄で、迫力のある男だ。


俺と出会った時も、それは変わらない。


だが、俺は昔、確かに聞いたのだ。


その時、旦那様は俺が寝ていると思っていた。


『旦那様。…俺を愛して下さらなくなったあの日から、かわりを買っていると聞いておりましたが…

そいつは…

どういうおつもりで、こんな立派な小屋まで作って、飼っていらっしゃるのですか?』


忍は『俺のかわり』と、確かに言った。


『忍…。

君を抱けなくなって、私は悲しかったよ。

…でもね。

今は、この子の事しか考えられないんだ。

こんなに満たされたのは、初めてなんだ』


『…そうですか』


旦那様が生きている時は、俺はこの会話を確認するのが怖くてできなかった。


だから、俺は、旦那様の死後、忍に確認した。


忍はいつものように冷たい口調で告げた。


旦那様が初めて欲情した相手は、今とは違い、あどけない少年だった頃の忍で、忍と旦那様は愛し合っていたと。


忍が成長して、身長が伸び、体毛が濃くなり…


声が変わると、旦那様の体は忍に反応しなくなったと。


その時、旦那様は初めて自分が少年しか愛せないと気付いた、と。

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