《MUMEI》
マドレーヌに挑戦
翌朝。


(何か、固形物も食べなきゃな…)


いつも通りゼリー飲料を飲み干した俺は、旦那様の言葉を何度も思い返していた。


(でも、嫌なんだ)


屋敷で出された食事があまりにうますぎたせいも、きっとある。


でも…一番の原因は、…


『お食べ、祐也』


そう、笑顔で言ってくれる旦那様がもう何処にもいないからだった。


あれ以来、俺は、何も…


(待てよ…)


祐先輩のマドレーヌ


無理矢理吐いたが、あれは、何故か俺は受け入れる事が出来た。


(潰れたマドレーヌなら、…食べれる、のか?)


そう思った俺は、バイト先のコンビニでマドレーヌを買って、わざと潰して食べてみた。


…一口噛んでトイレに直行して吐いた。


別のコンビニの物でも、同じだった。


そこで、俺は、翌日自転車で、有名洋菓子店に行って、マドレーヌを買ってきた。


…味わう事は出来た。


しかし、飲み込んだ後に、結局…


俺は、吐かずにはいられない衝動にかられた。


(どうしても、嫌なんだ)


旦那様と一緒に食べた物以外は、吸収したくないと思ってしまう。


俺は、旦那様の言う事に従えない自分の体が憎くなった。

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