《MUMEI》
和解
「……兄貴、入っていい?」

昭一郎の部屋の前で幹祐は足を止める。

「……ああ。」

布団から身を起こした昭一郎は何か、刺々しい鎧が剥がれ小さく見えた。

「俺、兄貴達の事全然分かってなかったんだな。勝手に反発して話し合わなかった自分に苛立っている。」

幹祐は幼かった自分が悔やまれた。

「俺は後悔では無いと思っている、……ただ俺は、どうしてこうなったのか自分が分からない。」


「……あのさ、国兄からコレ……ある人の連絡先が書いてある。
俺は、その人の所に行って欲しい。俺、兄貴達の苦しんだ分、何かしてやりたいんだ。」

幹祐の手から昭一郎へ、紙切れが移動した。

「お前は学生なんだから勉強してればいいんだ。」

昭一郎は紙切れを一度開いて手の中で潰す。



「……卒業したら、その後はどうなんだよ。
兄貴は長男だからって思うかもしれないけど、そんなものに縛られるような奴じゃないだろ?
俺、多分、農業好きだ……頼むよ。父さんも母さんも俺が面倒見るからさ……」

兄貴達より農業が好きだ。

「破滅させる気か」

紙切れに更に力が篭る。

「踏み出して欲しいんだ」

国兄も俺も。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫