《MUMEI》

普通に過ごし、普通の生活をしている毎日。
しかし、また悲劇が起こりそうなのだ。

「…智嬉、なんか胸騒ぎがしないか?」
ある放課後。冬休み直前の出来事だった。
「いや、別に俺はしないが」
(変に苦しい…)


滝は担任の光一先生と相談していた。

「またか…。悪い出来事が続くな」
「悪夢ばかり見て苦しいんです。夜も熟睡出来なくて」
「気分転換に遊びに行ったらどうだ?冬休みにいい機会じゃないか」

些細な事まで真剣に応える先生。本当に感謝しなくてはならないと、滝は思った。
「はい…そうですね」

しかし、滝の顔は一向に沈んだままだ。

家に着くと、智嬉も居た。
「よぉ」
智嬉のいる姿に滝は勢いよく転けた。

「なんでお前は俺の我が家に居るんだよ!」
「普通の高校生が“我が家”なんて言うか?啓助」
「言わない」

親しく普通に弟と話している。

「まぁまぁ、滝も…今日は泊まって行くんだって」
母は智嬉が泊まるのを知っていたそうだ。

「智嬉…そういう事はまず親友である俺に言え。な?」
「分かったよ…」

やけくそに、滝はご飯を食べた。

「俺に…なんの用なんだよ?」

滝の部屋は至ってシンプル。必要なものしか置いていない。

「滝…!爆発したいならしたっていいんだぞ」
学校の鞄を置き、寝間着に着替える。

「うるせぇよ…俺は爆発したくない…」
「迷惑かけられないってか?」
「そうだ」
「いつもそうだよな、お前は」

智嬉は段々イライラが増して来る。

「痩せ我慢はよしたほうがいいんじゃないか?」
「苦しいよ…そりゃ苦しいよ…だけど、他人に迷惑はかけられないから」

「滝は偉いな」

滝の肩を叩く。

「荒井先生に相談してみたらどうだ?」
「別にいい…俺は寝る」
「そうか」

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