《MUMEI》

「―――――」




出ない。








もう一度かけるが留守電に変わる。



頭をかきながら携帯をテーブルに置く。


冷蔵庫から缶ビールを出し、テーブルの前に座った。




「――――便所か?」


もう一度かけようと携帯を取ると…



「♪♪♪♪♪♪」


「はい、」




『無事帰ったで〜ゆうちゃん!』




「おかえり、帰り混まなかったみたいだね」




俺はテーブルから煙草を取り、火をつける。




『加藤君どうだった?』



「うん…、なんかかなり情緒不安定だな、つか今俺んちで爆睡中」




チラと振り返ると俺の方を向きながら豪快に鼾をかいている。



『ああ、なんか鼾か?…聞こえるよ、―――じゃあ潮崎君は?』




「うん、なんかさ、この二人なんかあったっぽいんだよね、――
惇がさ、隆志帰ったって言うから俺ん家に連れて来たんだけど、来る際に何気に惇の部屋のベランダ見上げたらさ…、
隆志いたんだよね、暗くて良く見えなかったけど確かに人いたもん」




『――なんだそれ?』


「うん…、でやっぱ惇の様子おかしすぎるから隆志に電話したらやっぱ居たんだよ、で、迎えに来る筈がまだ来なくてさ、携帯も出ないっつーか…、なんなんだろ、一体」



灰皿に灰を落としながら掛時計を見る。


――遅すぎる…。



『まーでも寝てんじゃほっとけな、潮崎君も今日は疲れてんだろうしもしかしたら寝ちまったんじゃねーか?』


「うん、そう…疲れてると思ってさ。だからやっぱ預かるから来なくて良いって言いたいんだけど連絡つかねーしさ…、まあ寝てんのかな?そうならそれでいいんだけど、アイツ真面目なとこあるから思わず寝ちゃったなんてない気もするしで…」



『は〜……、ぐずぐずごちゃごちゃ考えてっとゆうちゃんが寝れなくなっぞ?なあ、加藤君ち近いんだから見てくれば?何があったのかもついでに聞いてくれば良いだろ』




「―――そうだよな、惇の容態も知りてーし…ちょっと行ってくっかな」



『ま、気をつけてな、あと俺も気になるから帰ったら電話くれ?』



「うん、ごめん……今日は…、」



『 ―――いや、俺も帰りがけイライラして悪かった。…ダチは大切にしろ?20過ぎるとなかなかダチは増やせねーからな、』




「うん…、有り難う」





とりあえず行って来ると言い、俺は戸締まりをしてマンションを出た。

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