《MUMEI》 素朴な疑問「マドレーヌブームは終わったのかい?」 「ハハハ…まぁ」 店長の言葉に、俺は苦笑した。 コンビニに置いてある数種類のマドレーヌを日替わりで食べていたり、店長に洋菓子店の事を訊いていたから、すっかりマイブームだと勘違いされていた。 旦那様の言った普通の意味は相変わらずわからないが、俺はとりあえずバイトを続けていて、夏休みも、シフトが入っていた。 バイトは便利だ。 同級生や、高山や、…何故か祐先輩に遊びに誘われた時の言い訳に使えるから。 おかげで、プールも海も祭も断れた。 津田さんは、どうしても俺の浴衣姿が見たかったと悔しがっていた。 本当にバイトがあって良かった。 浴衣が着れないとか、持っていないなんて言い訳は、津田さんには絶対に通用しないと思った。 (下手したら、…危ないよな) 俺は軽く身の危険を感じていた。 「バイトばっかりで、大丈夫かい?」 そんな俺を、店長は心配してくれた。 「はい」 人のいい店長を見ながら、俺はふと思った。 (店長にとっての普通って何だろう?) 俺の知る限り、店長は一番常識のある普通の大人だったから、興味があった。 前へ |次へ |
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