《MUMEI》 キングの弱点二度目の朗読ボランティア。 俺の周りには、以前より多くの老人達が集まっていた。 老人は、高い女の声よりも、低い男の声の方がよく聴こえる。 そして、俺の声は高山より低く、屋代さんによく似た重低音だった。 その様子を見ていた屋代さんは、再び機転をきかせた。 屋代さんは、グループを二つに分けた。 俺と、女子二人。 それから、高山と希先輩と、残りの女子二人。 俺と高山は、ナレーションと、大人の男役。 希先輩も含めた女子四人は、子供や女役。 朗読の割合は、男二人が圧倒的に多いから、老人に内容が伝わりやすく、複数で朗読することで、物語にメリハリが出るので、前回よりも好評だった。 …意外と、俺のグループの老人達から高山の姿が見たいという不満は出なかった。 屋代さんが、うまくグループ分けしてくれたおかげだと思った。 俺も含めた三人は、割と朗読に向いているらしく、屋代さんは、物語を純粋に楽しみたい老人達を俺達のグループに割り当ててくれた。 (しかし、あいつ演劇大丈夫かよ) 微かに聞こえた高山の朗読は… 呆れる程、棒読みだった。 前へ |次へ |
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