《MUMEI》
春日さんだけの普通
「春日さんにとっての普通って、当たり前の事って何?」


「…あたしだけの普通って事かい?」


俺が頷くと、春日さんは少し考え込んだ。


「普通っていうのかねぇ…
あたしはただ、あの人が、正(ただし)さんが死んでも、どうも…

死んだって言われただけで実感わかなくて…」


「それで!?」


俺は思わず、春日さんのベッド柵に手をかけ、身を乗り出した。


(同じだ)


俺も、忍から旦那様の死を聞かされただけで、まったく実感がわからなった。


死んだというより、突然いなくなったような気持ちで…


いつか俺を迎えに来るかもしれないと、思った事もあった位だ。


「ただ…正さん以外とまた夫婦になる気がしなくて

じゃあ、一人で生きようって…

それから、一人でいるのが当たり前に、普通になって…」


一人で生きる


一人でいる


それが、春日さんの普通


「言っとくけど、大変だよ。
…今も昔もね」


春日さんは、悲しそうな顔をして、俺を見つめた。


「春日さんは、後悔してる?」


「どうだろうねぇ…。

あぁ、疲れた」


そう言って、春日さんは俺に背を向け、タオルケットを頭からかぶった。

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