《MUMEI》 春日さんだけの普通「春日さんにとっての普通って、当たり前の事って何?」 「…あたしだけの普通って事かい?」 俺が頷くと、春日さんは少し考え込んだ。 「普通っていうのかねぇ… あたしはただ、あの人が、正(ただし)さんが死んでも、どうも… 死んだって言われただけで実感わかなくて…」 「それで!?」 俺は思わず、春日さんのベッド柵に手をかけ、身を乗り出した。 (同じだ) 俺も、忍から旦那様の死を聞かされただけで、まったく実感がわからなった。 死んだというより、突然いなくなったような気持ちで… いつか俺を迎えに来るかもしれないと、思った事もあった位だ。 「ただ…正さん以外とまた夫婦になる気がしなくて じゃあ、一人で生きようって… それから、一人でいるのが当たり前に、普通になって…」 一人で生きる 一人でいる それが、春日さんの普通 「言っとくけど、大変だよ。 …今も昔もね」 春日さんは、悲しそうな顔をして、俺を見つめた。 「春日さんは、後悔してる?」 「どうだろうねぇ…。 あぁ、疲れた」 そう言って、春日さんは俺に背を向け、タオルケットを頭からかぶった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |