《MUMEI》
いろいろな普通
「随分仲良くなったんだね」


春日さんの部屋から出てきた俺に、屋代さんが声をかけてきた。


「いろいろ、話が聴けるんで」


「そうなんだ?」


屋代さんは意外そうだった。


(この人の普通は参考にならないよなあ)


俺は、屋代さんとはそれ以上会話せずに、他の五人と一緒にバスに乗り込んだ。

「これ位普通だよね!」


乗った途端に一人の女子が怒り出した。


どうやら、髪の色を老人ホームの女性職員に注意されたらしい。


彼女は、この中で唯一茶髪だったが、確かにそれほど目立つ色では無かった。


「おばあちゃん達は、綺麗だねってほめてくれたのに!」

「じゃあ、いいじゃん」

「ね〜」


(本当に普通もいろいろだな)


俺は、騒がしい三人を見ながら呑気に思っていた。


「「静かに」」


高山と希先輩は、そんな三人を小声で注意した。


普通は、バスの中では騒いではいけないから。


そして…


乙女キング高山は、希先輩と声が揃っただけで、かなり嬉しそうだった。


(恋する乙女としては、ありかもしれないけど)


高山の外見では、無しかもしれないと、俺は思った。

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