《MUMEI》
津田さんの普通
「普通って何?」


普段は俺がしている質問を、逆に津田さんからされてしまった。


「志穂さんや希みたいに、純情ですぐ赤くなるのが普通なの?
私は普通じゃないの?」


「わかりません」


少し前なら頷いたかもしれない質問に、俺は答えられなかった。


「祐也にとって普通って何?」


「わかりません。…すみません」


本当にわからない俺は、津田さんに頭を下げた。


「私は、人のサイズが分かるのが普通だし、好きな人には好きって言って、気持ちを隠さないのが普通なの。
両親だってそうだから。
だから、世間の普通と違って、結構昔はびっくりした」


(…俺も)


旦那様と忍しか知らないから。


普通は両親がいて


普通は学校に皆通っていて

普通は…男女でSEXするなんて知らなかった


旦那様は、俺には世間の普通を何一つ教えてくれなかったから。


「でも、私はそれでも構わない」


津田さんはきっぱり言った。


(いいな…)


俺にも、見つかるだろうか。


ズキン


(痛っ…)


昔を…旦那様を想うと胸が痛むのに


誰に何を言われてもいいという、俺だけの普通を俺も見付けたいと思った。

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