《MUMEI》
傷痕・弐
あぁそうだ。
僕は
逃げたんだ。
「じゃあちょっと村長の所行ってくる」
「あ、うん。哉矢行ってらっしゃい」
この後、気づいてしまった。
「何かここ…来た事あるような……」
「村長!こんにちは。」
「おや。哉矢、昨日は災難だったねぇ。その旅人とは?」
「ああ、沙羅って言う15才ぐらいの男の子です」
村長が眉をひそめた。
「沙羅…?哉矢。ちょっとその子に後で会いに行ってもいいか?」
「え、はぁ…」
「沙羅お兄ちゃん!知ってる?あそこに何で花が供えてあるか」
七矢が話かけてくれた。
「え…さあ?」
「あのね。村長今65歳ぐらいなんだけど、5才くらいの頃、嫌われ者があそこに住んでて、原因不明の火事で死んじゃって、その子供も村を出て行った…それでみんな後悔して花を供えるようになったんだって」
えっ…?
まさか、ここはー…
僕がいた、村?
「お兄ちゃん?」
僕は痛みを堪え立ち上がる。
僕はまだ、この村に居る勇気がないー…。
「哉矢に、ありがとうって言っておいて。
僕はまだ、ここに来るべきじゃないんだ」
ごめんなさい。
僕はまだ
罪を拭いきれていない
まだ、納得のいく
結果を出せていない
だからー…
いつか、またここに
犯した罪を、
自分自身が許せる時まで…
こことは
暫しの別れ
傷痕は消えない
けど
前に進みたいから
《傷痕》終
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