《MUMEI》

私は携帯電話を急いで元の場所に置き、身を潜めた。

微かに声が聞こえる。

「こんな可愛い子、久しぶりだな。しかも中学生なんて。おじさんラッキーだよ。」

気持ち悪い声が、聞こえてくる。

「五万だから。」
成原さんはそっけなく言った。先生が言ってたとおりなら、成原さんはあのおじさんに体を売るってこと・・・?

話し声は続いた。
「君、何ちゃん?」

「・・・奏。」

私は自分の耳を疑った。『奏』そう聞こえた・・・

そして路地が薄暗くて気付かなかったが、良く目をこらして見ると、私の前の学校の制服だった・・・盗まれたものに違いない。
まだ売ってなかったんだ。

怒りと、心配とで正気ではいられなかった。

私は、路地裏に消えていく二人を追った。


少し歩くと、古びたマンションに着いた。

成原さんは男性に促され、マンションの中へと入って行った・・・。

いったいどうして?
何故こんなことことになったのだろう。まさか、杉田くんに振られたから、ヤケになっているのだろうか?
それにしては、酷すぎる。自分を傷つけて、何になるのだろう・・・。
私は、成原さんの行動が信じられなかった。


バレないように、二人の後を追う。踊り場に出るたびに、身を潜めた。

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