《MUMEI》

「……あのな、徹夜明けてるんだよね。」

いざ、こういう流れになると老いを感じた。

「風呂まで入って何を言ってんの?」

殆ど入ってなかったから入ったようなものですから。

「……風呂入ったら眠くなってこない?また、来てよ土日空いたしお泊りとか、な?」

体がオフになっている。

「誘ったくせに酷いなあ、泣いちゃいそうだなあ」

乙矢がベッドの上で俯せに泣き真似をした。

「……ずっと待ってたって言った。
一度返した分余計に離したく無かったんだ、ちゃんと手は治ったかとか食べてるかとか悩んでないかとか上手く人付合い出来ているのかとか。」

乙矢と寝た時、泣くような『二郎』を呼ぶ声が纏わり付いて堪らなくなった。

嫉妬もあるけど、同調してしまった。
もっと、話してやれば良かったと後悔した。

「……俺の何に成りたいの?」

顔を半分腕から出して見つめられた。
彼の整った顔立ちに吸い込まれてベッドに半身乗り上げ間近まで接近する。


「なんにでも。

家族、友人、恋人、ペット、空気
……乙矢にだってなりたい………………………これ、口説き文句な?」


顎に手を添えられた。

キスだ。
気持ちが穏やかになる。不安や、嫉妬、全部飲み込まれた。

言葉より唇の方が遥かに短く伝達される。

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