《MUMEI》 頭が砕け、柘榴のような紅い実が溢れた。 半分崩れた顔は険しく、彼の指はもうあの美しい薔薇達を穏やかに触れることは二度と無い。 惟、人を好いただけで人は鬼にも修羅にも成り得る。其れは一途で在れば在る程に、狂気として流れ込む。 「大丈夫かい。」 実朝がぼんやりと壁の一点しか見つめていない林太郎を思い煩う。 「絵の女性は此処に棲んでたのですね。」 「……此の別荘は父さんが買い取ったのだよ。何も識らなかったんだ、天命だったのだろうね、偶然にも、此の屋敷で自分と酷似した境遇の人間と想い人の絵画とが揃い、作者の彼を突き動かした。其れだけだ。」 珍しく実朝は林太郎を励ました。 「君には絵を売って頂かなければいけないからね。」 「……貴方って人は。」 あくまで実朝の目的は利益でだった。 前へ |次へ |
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