|
《MUMEI》 …ある夜、過及(かお)が路地裏を歩いてると 真っ黒なコートを羽織り丸いサングラスをつけてる 銀髪の不気味な男に出逢った。 その男は細長い小箱を持っていた。 其れを右手でむねに抱えピエロが挨拶するかのように 左手を広げて右足を曲げて 脚をクロスさせ御辞儀した。 すると天高く指差し、 「貴方はこの月夜に選ばれました。 どうぞこれをお持ち下さい 。 ゆめゆめあのコトバだけは 、 云わないようにして下さいまし」 男は小箱をそっと過及に渡すとステップを刻むようにして 踊るようにその場を去って行った。 過及は目をぱちぱちと瞬かせ、 暫く呆然と小箱を抱えて立ち尽くしていた。 家に帰り箱を開けると 中にはワインが入っていた。 夢遊病者のようにふらふらと 思わずそれの栓を開けると それははとてもかぐわしい香りで 夢の中にいるように身体がフワフワとした。 過及はゴクリと唾を飲んだ。 ワイングラスにそれを徐に注ぐと ちろりとそれを舐めるように味見した。 それはまるで今まで飲んだことの無いような 虹のようにいろんな味のする 不思議なワインだった。 ひとくち口に含むと もっともっと飲みたいという気持ちが ぶわっと巻き上がり、 あっと云う間に一人でそれを飲みきった。 すると不思議な事が起きた。 過及は目を丸くして ワインの底に顔を近付けた。 すると底からジワジワと湧き出すように ワインが溢れてきた。 それはみるみると量が増えて行き あっという間にワインの口まで いっぱいになった。 過及はワインの上側を持ち目をぱちぱちさせながら いろんな角度からワインを眺めましたが、 何も仕掛けなどない只のワインでした。 過及は其れから毎晩友達を呼び、 パーティーに明け暮れました。 何せいくら飲んでもなくならないんですから。 ずっと友達に隠していましたが、 ある日我慢出来ずに友達にこう云いました。 「このワインいくら飲んでもなくならないんだぜ」 そう云って、ワイングラスに次々注ぎ、 最後の一滴を落とし、しばらく待ちますが。 一向にワインは以前のように湧いてきません。 過及はあっと声を出しました。 『ゆめゆめあのコトバだけは云わないようにして下さいまし』 過及がその事を思い出しても後の祭り。 ワインは空のままで 二度と満たされることはありませんでした。 |
|
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |