《MUMEI》
最終日
「いやー楽しかったね!写真集には載らないいい思い出ができたよ」

「……ったく、お前マジで恨むからな!?いきなり海に突き落としやがって」

「あはは……人聞き悪いな。砂浜で転んだだけじゃんか」

「オレにとっては命取りだ!!」

「そんな大袈裟な…」

有理の怒りはすぐには収まりそうになかったので、オレは勉強をすることにした。

一週間も休んでるんだ。しかも仕事を理由に順位を落とすなんてできない。

認めてもらえたのだって、成績がまあまあいいからだ。

「……今何の勉強してんの?」

「ん?数学Bだよ。すっげえ難しいんだ」

「例えば?」

「ベクトルとかかな。オレ理系ダメなんだよ」

「ふーん」

有理は興味深々でオレの教科書やノートを覗き込んで来る。

「……教えてやろうか?」

「でも苦手なんだろ?」

「…まぁな」

「流理が得意なものでいいよ」

嬉しくなって、つい笑みがこぼれた。

――明日帰るんだな。そうしたら有理とこんなひとときもしばらくなくなってしまうのか……。

ちょっと寂しいけど、いつもの日常に戻るだけだ。

また頑張って働いて、今度は仕事じゃなくてみんなで来れたらいいな。

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