《MUMEI》
こたえられない
今日は最後の朗読ボランティアの日だ。


(…春日さん、元気かな?)


そんな事を考えながら、俺は部屋の扉を開けた。


「おはよう、祐也」


「…おはようございます」

(何で?)


挨拶はしたものの、俺は何故津田さんがここにいるのわからなかった。


「私も行ってもいい?希には許可得てるんだけど」


「なら、いいんじゃないですか?」


班長の希先輩がいいと言うのに、俺が反対できるわけは無かった。


「祐也は迷惑じゃない?」

「別に…」


「良かった!」


津田さんは本当に安心したように笑った。


(困ったな…)


笑顔を向けられた俺は、どうしていいかわからなかった。


俺は、津田さんが嫌いではない。


好き…というか、人間的に、憧れるというか、尊敬している。


しかし…


ズキッ


今も、考えるだけで胸が痛くなるほど


…俺は、旦那様だけを愛しているのだ。


死人を愛するなんて、忘れられないなんて、虚しいだけとはわかっていても、俺には、旦那様しかいないのだ。


(ちゃんと、言わなきゃな)

津田さんの俺に対する気持ちが本当に本気なら、俺も本気で返事をしなければならないと思った。

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