《MUMEI》
雨
夕方までは晴れていたのに急に曇ってきた。
課題適当に片付けて背伸びをしたら、ふと窓ガラスに水滴を発見した。
「…降ってきた?…」
身を乗り出して外を見るとポツポツ濡れている。携帯を開いて検索したら夜の降水確率100%だった。
「―――――」
――傘…アイツ持ってないよな?
今日長沢は学習塾の日。 そんな日は学校から真っ直ぐ向かうから10時まで会えない。――会えないって……、なんかもうすっかり同棲状態な俺達。
始めはうざい時もあったけど最近は側にいない時は寂しくて辛くて泣きたくなる。
だから塾の日は新婚の奥さんが残業で遅くなる旦那を泣きながら待つ心境?
多分そんな感じ。
「傘…傘…持ってこーかな…」
―――きっと喜んでくれるよな?
・
久しぶりに電車に乗る。学校の近所に住む俺にとって電車は遊びに行く時以外縁がない。最近休みって言うと部屋でいちゃこらしてるか一緒に勉強してるかだったから。
ドアにかかっては滑り落ちる雨水を眺めながる。
学校で会っていたくせに、朝からエッチしてたくせに、久しぶりに恋人に会うみたいに心臓がめっちゃバクバクしていて。
外で再会するのも新鮮だよね?長沢びっくりするかな……。
改札出たら酷い土砂降り。塾の場所は駅から歩いて10分位だって聞いている。
東口から出て左に曲がって真っ直ぐだって言ってたのを思い出しながら俺は足早に突き進む。
すると聞いていた学習塾の看板発見した。
10分かかんなかった。
「――――」
看板、二階にかかっていて教室がめちゃめちゃ明るい。
俺は傘閉じて階段に座った。
携帯見ると後15分で終わる。
くだらないメール、日高に入れながら時間を潰す。
・
・
「―――はあ…」
終わる時間過ぎても長沢現れない。他の人いっぱいぞろぞろ出て来たのに長沢居なかった。
もうここ来て40分経った。時間も10時まわった…雨も更に強くなった……。正面の建物の灯りが消えて心細い。もしかして今日塾来てなかったのかな…。
でも行くって言ってたし…。
こんな事なら誰か捕まえて長沢いるかどうか確認すれば良かった。
「寂しいよ〜」
膝抱えて寒さをしのぐ。Tシャツじゃもう寒い季節になってきたのかな……。
「聖ちゃん!!」
「な、……ながさわあ〜〜〜!!」
振り返ると長沢が立っていて…
俺は傘ぶん投げて長沢の胸に飛び込んだ。
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