《MUMEI》 さすがのクイーン「志貴?」 「来ちゃった」 津田さんは、驚く屋代さんに軽く頭を下げた。 「お前がボランティア、ね…」 屋代さんは津田さんを見た後で、俺を見て ニヤリと笑った。 「とにかく、来たからにはちゃんとやるからね。 あ、私は祐也と一緒がいいからね」 「お前なぁー… 柊みたいに嘘でもボランティアに興味あってとか言えないのか?」 屋代さんは、俺と津田さんだけに聞こえるように小声で囁いた。 「私、嘘嫌いだもの」 「…はいはい」 屋代さんは苦笑しつつ、俺と津田さんと、女子一人を同じ班にした。 「よろしくね」 「は、ははい」 女子は、明らかに緊張していた。 (大丈夫か?) そんな俺の心配は、はっきり言って必要無かった。 自分の事でいっぱいの高山と違い、津田さんはきちんと周りを気遣う余裕があったのだ。 (さすが、クイーンってとこかな?) そして、朗読後も津田さんは、その美貌と巧みな話術で老人達を虜にしていた。 そんな中、俺はこっそりと いつものように、春日さんの部屋へと向かった。 「…? 春日…さん?」 部屋には誰もいなかった。 前へ |次へ |
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