《MUMEI》
進めない
   〜海視点〜


噛み合わない会話を続けていき、やっと状況が何となく理解出来た。


「栄実を学校に連れて行きたい理由は分かったけど、栄実の家に行っても栄実、多分出て来ないと思うぜ?」


俺は、低い声で言葉を発する。


「行ってみなきゃ分かんないだろ?」


そんな俺の雰囲気なんかお構いなしに歩は、あっけらかんと言う。


「無理だって言われて、はいそうですかって諦めれる訳ないだろ」


そして先程とは打って変わって、真面目な顔をして付け足した。


「こんなとこで海とくっちゃべってたって状況は何も変わらない・・・・・


ってことで栄実の家に出発!!」


元気よく、お―っと言わんばかりに握り拳をあげる歩。


ずっと真面目なテンションでいればいいのに・・・。


俺は小さなため息をつきながら歩き出した。


「なぁ、海?栄実・・・どうかしたのか?」


歩は、遠慮しているのか言葉を選んで質問する。


「ん――・・・・・

過去から進めないでいる感じ?

過去に押しつぶされそうになってるんだ・・・」


俺も考えながら言葉を選ぶ。


歩は訳が分からないといった顔をしていたが


「そっか」っと小さく呟いた。


「海はその過去を知ってるのか?」


歩は新たな質問を俺に投げかける。


「ん〜。でも俺の口からは言わない」


・・・・・言いたくない。俺のせいで栄実が傷ついただなんて。


・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・。


今、必死になって探してるけど


探し出せたとして栄実に会わせて・・・栄実が今以上に傷ついたらどうするんだ?


どうしたらいい?


分からない・・・。


探す意味なんて


・・・・・ないのかもしれない。


前に進めてないのは栄実だけじゃない。


俺も同じだ・・・。

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