《MUMEI》

長沢に身支度整えて貰って、俺は落ち着いたところで洗面所で顔を洗う。
甘い余韻の残るふわふわ感がまだあるけど、会いたかった長沢に抱かれて身も心も大満足。
それにクチでイかせた達成感…。
長沢もスゲー喜んでくれたし。

教室に戻ると長沢は教壇脇にあるパソコンいじっていた。
「コーラでイイよね?」
「うん」
はいって手渡された缶コーラ飲みながらパソコン覗く。
「中3用の数学の問題、俺が作ったんだ」
「え〜?作ったの?
参考書から抜いたんじゃなくて?」
「こういった大手の塾は講師が作るんだよ、ある程度たまったら出版したりもする」
「へ〜……」
するとプリンターからガガガと紙が出てきた。
はいって渡されて改めて見ると
「へ〜、意地悪な問題ばっか」
「これで少し遅くなってたんだ、ごめんね?」
「――今度は言って」
「うん…、ごめん」
怒ってはないけど寂しかったって言ったらギュッて抱きしめてくれた。
そして、帰ったらまたしようねって言われて、俺は思わず頷いてしまった。

「でもなんで長沢が作るの?」
問題すらすら解きながら聞く。
「実はこれバイトなんだ、まあ、さっき会った先生が作った事にする秘密の作業なんだけどさ…、プリント一枚で3000円の約束で契約した訳でさ、
事前に今日パソコンで作ったの見て貰ってたんだ」

「――だから昼休み行方不明だったんだ…」
「うん…」
問題解き終えて長沢に差し出すと少し見て、満点だって言った。
「なしてバイト?実家から仕送あるのに」
「だってもうすぐ聖誕生日だから…、また自分の稼ぎで何かしたいなって……――」

思わず俺から長沢に抱きついて俺からキスをした。


「早く帰ろ?貢にいっぱい甘えたい…」





外に出たら雨が上がっていた。でもどんよりとした空模様。いつまた降りだすか分からない、そんな感じ。
「急ご!」
長沢の手を掴んで俺は走り出す。
「聖ちゃん積極的〜!」
「ばか!雨降る前に電車乗るんだよ!」

本当は、早く甘えたい100%、今日の降水確率とお揃いの心境なんだけど。
俺のばればれの嘘に長沢は本当に楽しそうに笑った。
俺も笑いながら、今年の誕生日は楽しみだなって、思った。




END

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