《MUMEI》
合宿注意事項の確認
《わかってるな》


「わかってるよ」


演劇部の合宿前夜。


来月の旦那様の一周忌の準備で忙しいはずなのに、忍はわざわざ確認の電話をかけてきた。


《言ってみろ》


(はいはい)


「一緒に風呂は入るな・着替も見られるな、だろ?」

いくら旦那様が目立たなくする必要は無いと言われても、俺も皆に裸を見せて、変に詮索されたくは無かった。


合宿は、明日から、学校の合宿所で二泊三日で行われる。


明日からお盆だから、たまたま空いていたらしい。


明日の朝と、三日目、帰宅してから風呂に入れば皆と風呂に入らなくても問題は無かった。


《わかってるならいい》


「じゃあな」


《…あぁ》


旦那様の遺言を聞いた忍は、もう俺に目立つなとは言わなかった。


かわりに…


《お前の普通は見つかったか?》


毎回、こう質問された。


「…まだだ」


俺は、毎回、こう答えた。

ズキッ


毎回、胸が痛んだ。


旦那様の遺言を、守れない自分が悔しかった。


それでも、眠り、栄養は取る。


…それしか、俺が旦那様の為に今できる事が無かったから。

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