《MUMEI》 花弁デ埋メ品物を配置した部屋を一通り周り、最終日に大きな競りを始める。 品の質も重要だが、どのように作品を見せるかが大切なのだ。 競りに備え、実朝と林太郎は品物を整理した。 「しかし、君も強か者だな。すっかり意気消沈したと思ってたのに良く口が回るね。」 「脅したのは貴方です。俺は嘘はついてません。」 確かに気が滅入ったが、生き残るには割り切ることも大切と林太郎は熟知していた。 「其れだから君は北条の血統らしい。」 実朝はにんまりと靨が見える迄口角を上げた。 「俺は、庭師の彼を救えませんでした。 せめて、供養して呉れるような穏やかな場所に此の絵画を置いてやりたい。出来れば彼の愛を値踏みされたくないんですよ、しかし、売買されるなら彼の価値を示すような値にしたい。そう、思います。」 絵画の彼女を語る彼の悲哀に満ちた瞳が林太郎の頭を過ぎる。 「ほんの僅かな時間を共有した相手によく、感情移入出来るね。」 「……俺も彼と似た感覚を識ってますから。」 そう云った林太郎は一瞬、無表情で天井を仰ぐ。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |