《MUMEI》

「何だあいつのシュート…」


クロも見たことのないフォームだった。


(あいつにはボールを持たせないように牽制入れとくか…)


クロは恭介が苦戦している様子に気付いていた。


いや、クロだけでなく選手全員が気付いていた。


(…3点差か。


どうやって点取るかな…)


クロが考える。


「…いいのがいるじゃん。」


そう呟くと、


「翔太!!」


翔太を呼び寄せる。


「なんすか?」


「お前さ、


点取りに行きなよ。」


「え!?俺がですか!?」


「そうだよ!!上なんだから当たり前だろ!!」


「いや…、でも…」


翔太は、


センターは司令塔であるという考えから、


セットプレーではゲームメイクをし、パスを回す。


ということを心がけていた。


「昔は点取りに行ってたじゃん!!」


「そりゃ昔は…」


高校の頃は、自分でも点を取りに行っていた翔太。


しかし、海南クラブでは一番新人の翔太。


少し遠慮していた。


「勝ちたくないの?」


「…勝ちたいす。」


「じゃ、行きなよ。」


「いいんすね?」


「好きに暴れな。」


「…オッケーす。」

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