《MUMEI》 「……なあ、国雄の隣にいた高遠という少年……」 息子の横に連れた十は歳の離れた少年が無性に気になった。 「あら、高遠君は国雄のお嫁さんじゃないの。」 妻は思いの外冷静だった。 「男に嫁なんかあるのか?!」 「さあ?でもウチの子にはなるのでしょうね。高遠君はとても良い子ですよ。 今、最も輝いている若手俳優だってテレビで取り上げられて。国雄ったらあんな超芸能人を恋人にするなんて鼻高々だわあ。」 そして思いの外ミーハーだった……。 「だって子供はどうする?」 「さあ、養子とか? 大丈夫よ、昭一郎もいるし、幹祐だってカワイイ彼女がいるのよ。」 幹祐、いつの間に……! 「そんなもんなのか?」 複雑な世の中になったものだ。 「そんなもんです。」 長年連れ添った妻が言うのだから間違い無い。 前へ |次へ |
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