《MUMEI》
安心
「……?」

流理はすぐに理解ができずに疑問符を頭の上にたくさん並べた。

「……流理さん?」

「早苗さん……もう一回言ってください」

「に・ん・し・ん。妊娠したんです」

「……誰がですか」

「私です」

「誰の?」

「……有理の」

「へ――…」

「へ――って流理さん、そんな反応……」

「……いや、驚いたけど、なんか……すごいなぁと思って」

「何がですか?」

「子供が――つまりひとりの人間がそこにいるんでしょ?それってすごいですよね」

「……ハイ」

やっぱりこの人はなんか違う。

有理と同じ顔をしてるのに、思考が冷静でゆとりがある。

こんなこと言ったら有理に怒られるかもしれないけど、有理とはまた違う魅力を感じる。

「それで、どうするんですか?」

「私まだ19だから、子供を産むなんて言ったらきっと世間からは白い目で見られることは間違いないです」

「……たったひとつの命ですよ?有理と早苗さんのふたりだけの。重さにしたらどっちが重たいですか?」

「でも」

「確かに責任や子育ての不安とかなんかいろいろあるんでしょうね。それをふたりが全部引き受けられるって言うなら…それでいいんだろうけど。まぁ…どっちにしてもオレは反対はしません。ふたりで考えて決めてください。オレは聞き役にはなりますけど、意見は言わないようにします。ふたりのことですから」

「私……怖いです」

「それは有理だって同じですよ」

流理さんの安心する笑顔を見たら、有理に会って話したくなった。

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