《MUMEI》
「これ佐伯のお袋さんからの差し入れ〜」
オデンだ、オデンオデンオデンって歌いながら日高はキッチンに行って小さめのどんぶりと灰皿持ってきた。
慣れた素振りで勝手に缶ビール出して勝手に飲み始まる。
「ぷは〜!最高!!」
「そんなにうまいか?」
「うまいよ〜、ああ、長沢は酒も煙草もダメなんだっけな〜」
そう言いながら煙草までふかしだす。
日高ってちょっと前までセフレだった女共とイメージがだぶる仕草のオンパレードだ。
当時はあんまり気にしてなかったけど煙草と酒ダブルの奴ってなんか今見ると結構引くな…。
日高は片膝曲げてだらしない恰好で大根にぱくついている。
ちらりと隣に座る聖ちゃんを見ると真っ赤に頬を染めてモジモジしていて…
可愛い…
はあ…、日高と大違いだ。指先で座布団をこしょこしょひっかいていて……。
―――…あ、…
ローター入りっぱなしだからだっけ。
日高のアホさについ忘れるところだった。
「実はさ〜、レンタルでエロビ借りたんだけど俺のデッキ壊れちゃってさ〜、へへへ…
ここのテレビ迫力満点だからな〜、佐伯の好きな女子高生モノっすよ?」
「――未成年に借すなんてどんなレンタル屋なんだ…」
「フフッ、中学んときの同級生がバイトしてっからこっそりとな〜、あ、そういや長沢はあんまりこういったの好きじゃないんだっけ?ま、ちょっと俺達に付き合えよ」
達とはきっと俺の聖ちゃんまで巻き込んだ言い方。かなりむかついた、ムカついたけどここは我慢だ。
相変わらず黙ったままの聖ちゃんの腰にそっと腕を回すと小さく…本当に小さく、ァッ…って声を漏らした。
日高はデッキに向かってセット中、こっちに背を向けている。
聖ちゃんの耳元に
「日高いるよ?…我慢して……」
「む…り…、躰熱い…」
ふと見ると股間も可哀想な位膨らんでいて…、そしてうるんだ目で俺を見上げてきた。
「よ〜し!上映会だで〜!」
日高、テーブルに戻って来る。
俺はすっと立ち上がり、シーリングライトのスイッチを切った。
「真っ暗な方が良いだろ」
「なんだよ〜!長沢も本当は好きなんじゃん!」
――違う。
聖ちゃんに悪戯する為に決まってんだろ。
「まあな、たまには良いし」
と適当に言っとく。
すると大画面の中、女の子が現れた。
「……はぁ…」
聖ちゃんはうつ向いたまま頭を左右に揺らした。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
ケータイ小説サイト!
(C)無銘文庫