《MUMEI》 自分達デ『お願いします!前もって流理さんから有理に伝えてもらえませんか?その後は自分達で解決しますから!本当にお願いします』 ――って早苗さんは言って来た。一応、返事はしておいた。 そして今日、早苗さんが家に来る。 「有理――。早苗さんが来たよ!」 「お―今行く!」 部屋から有理の声が響く。 オレはリビングに早苗さんを通して、有理を迎えに行った。 「今日は連絡無しじゃん。どうかした?」 「うん……ちょっと有理に会って話したいことあって」 「何?」 「オレいない方がいいかな?」 「大丈夫です!あの、できればいてください…」 「何だよ?なんか様子おかしくね?」 「うん……ちょっと変だよね、私……」 有理は訳がわからない様子で早苗さんを急かした。 「あ…あのねっ!わ……私、気分が悪かったから病院に行ったの」 「病院?それで、大丈夫だったのか?」 「うん。病気じゃなかったんだけど、あの……」 有理はただ待っている。急かすのは逆効果だと気付いたらしい。 「……んしたの」 「え?聞こえなかった。何?」 「妊娠したの!有理の子供を!!」 「……は?」 ようやく有理が絞りだした声はすごく間抜けで笑えた。 ――我慢だ、我慢。 「おま……お前何言ってんの?冗談にしてはちょっと度が過ぎてるぞ」 「冗談じゃないよ!本当なんだってば。大体なんで有理そんなに驚いてるの!?」 「は?普通驚くだろ。そんな……恋人に妊娠したとか初めて言われたよ」 「ええ!?」 早苗さんの視線がオレに向けられる。自然と有理の視線もオレに向けられる。 「ゴメン、早苗さん。有理にはまだ話してなかったんだ」 「え?早苗、お前先に流理に話してたのかよ」 「自分達で解決。これがふたりの課題だよ。特に早苗さん」 「……流理さぁん」 早苗さんが泣きそうな声でオレに訴える。 そんな早苗さんにオレは優しく微笑んだ。 「でもちゃんと言えたじゃないですか。…じゃ今度こそオレ、部屋に行ってますね」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |