《MUMEI》

今住んでる所と同じくらいの大きさの部屋だと、家賃なんか倍以上は違うんだろうなぁ…。

とてもじゃないけど、バイトだけの僕にそんな所に住める程の余力は無かった。

だけど、この花屋のバイトも好きだったし、この今の暮らしは結構快適で今までの中では一番充実していた。

= = = = = = = = = = = = = = = =

「そうなら今度…キミの住んでる部屋に泊まっても良いかい?」
「えっ!い、いきなり何ですか?」

俺は物心付く前は日本のアパートに住んでいたらしいのだが、それ以降はドイツで生活していて、高校生ぐらいになって日本で寮生活をしていた。

「狭いですし、だ…ダメです///」
「でも、東京の生活を見てみたいんだ…」

高校の終わりぐらいの頃に一人暮らしの教師の部屋に押し掛けた事はあったけど、あれは家族向けの大きな部屋で、俺の理想とする狭い部屋では無かったかな…。

なので、日本の東京でアパートを借りて一人暮らしをするというのに憧れみたいなものがあった。

「…あの…本当に凄く狭いですよ」
「逆にその方がいい」

東京の学生が住むような狭い部屋で二人っきり、そんな生活もしてみたいな、と、愛しのアキラを見つめながらそう思った。




「そういえば…克哉さんってお仕事何してるんですか?一ヶ月もお休み取れるって凄いですよね」

アキラはそう言いながら無邪気に俺の顔を覗き込んできた。

「父親の会社がアパレル系でね、そこの副社長…というか父のお目付役だ」
「えっ///ぁ…副社長さん…なんだ…///」

アキラは俺の役職の方に驚いているようだったが、俺は実質秘書のようなものだった。

「あいつは秘書を雇えばいいのに、俺の方に面倒な事を全部押しつけてくるんだ…」

それを聞くとアキラがポカーンとした表情で俺を見上げていた。

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