《MUMEI》
静かな涙
「はーい」
誰かしら、こんな時間に。

「あら・・・。なつみー、お友達よー」

夏海に彼氏がいたことは母は知っていたので、彼だとすぐわかった。

夏海が玄関にきた。

「夏海、あがってもらいなさい、寒いから。」
「うん・・・」

「どうしたの?」
夏海は、真っ赤な目をして笑顔で聞いた。

「おまえ、バイトは?」

「休みだったんだ」

「なんでだ?」

「・・・・」
「・・・・ん?」

「なんで、言ってくれなかったの?私、知ってたんだよ、いなくなるの」

「そっか・・」

「だから、今日は休みをとったの、口で言ってくれるかと、そのあとも、時間の許すかぎり、一緒にいたかった・・」

そう、言いながら、夏海は涙が溢れてきた、止まらなかった、静かに静かに、ポロポロ流れて止まらなかった。
奴は何も言わずに、夏海のの、静かな涙を見ているだけで、ただ、座っていた。

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